捩れ曲がった愛

第一話

「始まり・・・そして・・・」


元気な声がスタジオ内に響き渡る。
「あっ来た来た、遅いよっ雅弓ちゃん」
「ごめんね温子ちゃん、ちょっと寝坊しちゃって・・・」
そう言って雅弓はぺロッと舌を出す。
今回の仕事で共演している「榎本温子」である。
その仕草が可愛かったのか温子は笑みを浮かべた。


「じゃあ早速、始めたいと思いますのでスタジオの方に入っていただけますか?」
「はーい」
スタッフ呼ばれて二人はスタジオに入っていった。



「これから、お昼ご飯食べに行こうよ」

そう言ってみんなに催促するのは同じく出演者の「山本麻里安」である。
午前中でアフレコの仕事は終了していたので食べることの大好きな麻里安は真っ先に2人に提案してみた。
「ごめーん麻里安ちゃん、これからまた別の仕事が入ってるの」
そう言って雅弓は両手を合わせ謝るそぶりをする。
「しょうがないよね、じゃあ2人で行こうか温子ちゃん」
「そうね」
「本当にごめんね、また今度、誘ってね」
雅弓はそう言うと早足にスタジオを出て行った。




「これからどこに行くの・・・早く下ろして・・・」
1BOXカーの中。
雅弓はこの異常な空間に今にも泣きそうになる。
「心配するな、なにも殺したりはしないよ、まーちゃん」
史はニヤニヤしながら雅弓に声を掛ける。
そのいつものあだ名を聞いて思わず運転している史の方に振り返る。
「あなた・・・・私のファンの人でしょ・・・・そういえば握手会で何度か見た事があるわ」
「僕の事、覚えていてくれているなんて嬉しいなぁ」
「何でこんなことをするの、やめて、考え直して」
そこに瑛が話しに割ってはいる。
「まーちゃん、長谷川と付き合ってるんだろ?、そいつがちょっと気に入らなくてさ」
「私が誰と付き合おうがあなたたちには関係ないでしょ」
目を吊り上げて雅弓が叫ぶ。
「まーちゃんは俺たちの物だぜ、これから俺たちがまーちゃんの体の隅々まで浄化してあげるよ」
その言葉を聞いて雅弓は体をこわばらせる。
「やめてっ、何を考えているの」
その言葉を無視して瑛は話しを続ける。


こちらの作品はVoice.Act Vol.1に収録されております

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